「浮腫」とは間質液が皮下に貯留した結果生じた腫脹のことであり,原因は多岐にわたる。筆者が通常の外来で実践している系統的な浮腫の鑑別フローチャートを図1に示す.浮腫の診断の第一歩は,浮腫の原因が全身性の病態か,それとも局所性の病態かを鑑別することである.この両者の簡便な区別方法は「両側性か,片側性か?」である.両側対称性の浮腫では,全身性の病態として体液量増加をきたす浮腫性疾患や,血管透過性亢進をきたす炎症性疾患,低アルブミン血症,そして代謝?内分泌疾患として甲状腺機能低下症や糖尿病を念頭に置く.一方,片側性の浮腫では,局所で間質液の還流が阻害される原因として静脈閉塞(静脈血栓症)やリンパ浮腫,さらに局所の血管透過性亢進をきたす炎症の存在を念頭に診察を進めるとス厶ーズだろう.ただし,ティアニー先生のクリニカル?パールとして,"All bilateral diseases can start by one side"(両側性に起こるすべての疾患は,片側から症状が起こりうる)が知られているように,「両側性=全身性」「片側性=局所性」には例外があることは付記しておく.しかし,実際には全身性浮腫に対してこのような古典的アプローチで,心不全,肝硬変,ネフローゼ(低アルブミン血症),甲状腺機能低下症を念頭に置いて精査しても,診断に至らないことが多いのが実情だろう.そのような状況でこそ,薬剤性浮腫を疑うことが重要である.薬剤性浮腫を常に考えることが重要である根拠は,①薬剤が浮腫をきたす機序は多様であり,非常に多くの薬剤が浮腫の原因となること,②薬剤の中止により症状の改善が期待できること,という2点にあると筆者は考えている.
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