ABCDアプローチで見極める薬の使い方:酸素化障害

摘要

呼吸不全は「呼吸障害のため動脈血ガス(酸素,二酸化炭素)が異常値を示し,正常な生命活動を維持できない状態」と定義される。このように呼吸は酸素を取り込み,エネルギーを産生し二酸化炭素を体外に排出する生命活動に重要な行為である。特にアデノシン三リン酸(ATP)の産生が重要であり,グルコース1分子から解糖系ークエン酸回路ー電子伝達系を経て38ATPを産生するには，酸素を十分に取り込んだ好気性条件が必須である。嫌気性条件下では解糖系から先に進むことができず，乳酸が蓄積され，2ATPの産生のみにとどまり，エネルギー効率が1/19となるため，呼吸不全のなかで酸素化障害が継続すると多臓器不全に陥る.このような生理学的背景を理解すると酸素化障害に対して早急な対応が求められることが理解できる。本稿では，酸素化障害を呈している患者に認められる警告的サインを察知できるよう,急変前の前駆症状と,緊急時に行われる迅速導入気管挿管(rapid sequence intubation ； RSI)で使用する薬剤について解説する。