凝固収縮を考慮した溶接凝固時の限界ひずみの推定

摘要

従来の溶接凝固過程における応力·ひずみ解析は，有限要素法を用いた熱弾塑性解析が行われてきた．それらの中では，主に熱ひずみと塑性ひずみが扱われているが，凝固収縮を線膨張係数の変化などで明確に考慮した解析は少ない．一方，鋳造工程では凝固収縮に起因した凝固割れの解析モデルとして，RDG（Rappaz-Drezet-Gremaud）モデルが知られている．このモデルはデンドライト樹間に存在する液相の内圧に着目し，凝固収縮などに伴う内圧低下で形成される空孔が凝固割れの発生初期であると考え，限界ひずみ速度が導出されている．RDGモデルにおける限界ひずみの解析は連続鋳造における割れ感受性の評価にも適用されている．本研究では，凝固収縮に起因する溶接凝固時のひずみを推定した．組織形成のシミュレーションにはマルチフェーズフィールド（Multi-Phase Field: MPF）法を活用した．MPF法は多相系および多結晶系の組織形成の解析が可能であり，凝固時の複雑な形状，セルまたはデンドライトが再現できる点が特徴である．まず事前実験によりMPF法における計算条件の確認や計算と比較するデータの抽出を行い，その後でMPF法により溶接凝固時の組織形成を解析した．さらに組織形成のデータを基にしてRDGモデルによる凝固時の限界ひずみの推定を試み，凝固収縮が凝固割れ発生初期に関与する可能性を検討した．