高Mnオーステナイト鋼の多層盛溶接金属における高温割れのキャラクタリゼーション

摘要

発電所，自動車等の内燃機関におけるエネルギー創出において二酸化炭素排出を避けられない一方で，地球温暖化対策から二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量削減に対する規制が国際的に進められている．温室効果ガス排出量を抑制するための手段としては，天然ガス，水素等の有効活用等が提案されているが，天然ガス，水素を燃料として使用する場合には，燃料としての使用方法の問題のみならず，輸送および貯蔵手段の選択が課題となる．天然ガス，水素は，極低温度での液体による貯蔵が検討される例が多く，貯蔵容器には気密性が求められることから溶接施工の適用が欠かせず，加えて安全性確保のために溶接部に対して極めて高い健全性が要求される．また，極低温度での貯蔵となることから材料には低温靱性に優れる材料，特にへき開破壊が生じない面心立方構造の材料が使用される場合が多い．面心立方構造の極低温用材料としてAl合金，オーステナイト系ステンレス鋼SUS304等があげられる．強度特性に関しては，Al合金が低強度であることは言うまでもなく，SUS304も通常のフェライト鋼に対して強度重量比で劣り，またδフェライトが残留することに起因した靱性低下等の問題も挙げられている．