現代社会を維持する上で必要不可欠な金属や酸化物等の材料は,一般に多結晶体と呼ばれる有限サイズの結晶粒の集合体で出来ている。このような材料中には,無数の格子欠陥が存在し結品とは異なる原子構造を有する。そのため,巨視的レベルの特性にも多大な影響を及ぼす。特に結晶同士の界面である粒界はこれまでよく研究されてきており,特異な原子構造に起因した新機能の発現が期待されている。昨今の技術進展は目覚ましく,走査透過型電子顕微鏡法(Scanning Transmission Electron Microscopy,以下STEMと略)により原子レベルでの直接観察が可能となってきた。さらに,STEMを用いた原子レべルのスペクトル解析と,第一原理計算や分子動力学法等の理論計算による安定構造の決定や電子状態の解析が行われている。しかしながら,最安定粒界構造を決定することは多大なリソースを要求する。現代ではSTEMによる原子構造計測が普及してきており,材料現象の本質を系統的に明らかにするためには,粒界三次元構造の背後に存在する数理を解明することが重要である。
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