「幸せ」の本質と計測

摘要

予測不能な時代である．予測不能な変化に立ち向かうのは決して楽ではない．だから前向きな精神的エネルギーが必要である．しかし，変化に前向きに立ち向かうのは，それに見合う，やりがいと成長とつながりと共感を伴うものである．これが実は「幸せ」につながる．本稿のテーマは，この幸せの本質を計測データに基づき論じることである．最近20年間のポジティブな心理や組織行動の研究により，重要な発見があった．われわれは，「仕事がうまくいくと幸せになる」「健康だと幸せになりやすい」と考えがちである．実は，因果関係はこれとは逆だということが明らかにされた．「幸せだから，仕事がうまくいく」，「幸せだと，病気になりにくい」のである．幸せな人は，営業の生産性は30%程度高く，創造性では3倍も高い．さらに，同じく幸せな人は，健康で長寿で，結婚の成功率も高く，離職もしにくい．そして，幸せな人が多い会社は，そうでない会社よりも，一株当たりの利益が18%も高い．このようなデータに基づく知見が続々と得られたのである．