栄養療法

摘要

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ； IBD)は潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis : UC)とクローン病(Crohns disease : CD)に代表される原因不明の慢性難治性腸炎である。IBD患者は年々増加傾向を示し,わが国では2014年の統計でUCが22万人，CDが7万人にのぼると報告されている。IBDには根治療法が存在しないため,その治療方針は急性期症状の改善(寛解導入)とその後の症状安定(寛解維持)が基本となる。具体的には薬物療法と栄養療法,および外科的治療が中心となるが,約20年前の生物学的製剤の出現によりIBDの薬物治療は大きな変革を迎えた。すなわち,抗TNFα抗体製剤を皜矢とする生物学的製剤や分子標的薬,免疫抑制薬の開発により,IBD治療の自然史も大きく向上している。これらの新規治療薬に関する詳細は別稿に委ねるが，そのような薬物療法の進歩のなかにおいても栄養療法は基本治療として位置づけられており,特に薬物治療抵抗例や生物学的製剤二次無効症例などの難渋例へ優れた有効性を示す。本稿ではIBDに対する栄養療法のポイントについてエビデンスとコンセンサスを交え解説する。