原子核物理学は、今から遡ること百年以上前のラザフォードによる原子核の発見に始まる、長い歴史をもった学問領域である。20世紀における先端加速器科学の発達と測定器技術の向上、それと並行した素粒子·原子核物理学の進展とを歯車として原子核の描像も大きく変遷してきた。陽子と中性子を構成要素とする伝統的な原子核の描像は、これらのハドロン粒子を構成するクォークとグルーォンのダイナミックな世界へと進化を遂げた。宇宙初期のビッグバンにおいて実現したと考えられていた高温のクォーク·グルーオン·プラズマ(QGP)状態は、RHIC(Relativistic Heavy Ion Collider)やLHC(Large Hadron Collider)といった高エネルギー重イオン衝突型加速器によって再現され、その特異な性質が明らかになりつつある。近年観測が可能となつた連星中性子星合体からの重力波は、中性子星中心部の超高密度ハドロン/クォーク物質の物性を教えてくれるに違いない。
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