III.婦人科希少がんにおける薬物療法の開発一抗HER2療法の夜明け一

摘要

近年は,薬物療法の進歩により婦人科がん領域でも従来の殺細胞性抗がん剤に加え,抗VEGF抗体であるべバシズマブ,PARP阻害薬であるオラパリブやニラパリブ,高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-high)を認める固形がんで抗PD-1抗体であるペムブロリズマブといった分子標的薬が次々に保険適応となった。一方,婦人科がん領域は卵巣腫瘍に代表されるようにその組織型が多岐にわたることから,実に50%以上が希少がんの定義を満たすとされる。しかしながら,治験を実施するだけの患者数確保が困難であること,市場マーケットが小規模であることなどの理由から,アンメットメディカルニーズが存在するにもかかわらず希少がんに対する薬物療法の開発は困難な状況にある。本稿では,分子標的薬の話題を含め婦人科希少がんに 対する治療開発の最新の話題について,子宮体部漿液性癌(uterine serous carcinoma: USC)や子宮癌肉腫(uterine carcinosarcoma:UCS)での導入が期待されている抗HER2療法を中心に概説する.