複視に対するプリズム治療

摘要

日常臨床において，複視は患者を悩ます自覚症状である.光学的矯正としてのプリ ズムは,その治療に不可欠で,種類には組み込みプリズムとフレネル膜プリズムがある.両者 にはそれぞれ利点?欠点があり，特に膜プリズムは10△以上になると,解像力（コントラスト 感度?視力）が低下することが問題となる.その主な要因は,プリズムの厚さを一定にする構造 上の光学特性による色収差や散乱，反射である.しかし，それらを把握したうえで,適切に使 用すれば，複視を軽減ひいては消失させることができ,患者の高い満足度につながる.膜プリ ズムの処方は長時間を要し,手順や管理も煩雑であるが,成功には医療者の知識と技術，患者 の理解が重要となる.