メンデル生誕200年記念特集号に寄せて

摘要

遺伝学の祖メンデル（Gregor Johann Mendel)は 1822年7月22日（20日説もあるが，両説の根拠 についてはメンデル小伝で触れる）に誕生してい るので，2022年はそれから200年目にあたる。遺 伝学は現代生物学のコアとなっている重要な学問 領域であるので，200年は大いに祝うべきエポッ クである。しかしながら，メンデルの研究成果は 生前にはまったく評価されておらず，1884年1 月6日に亡くなるのであるが，カトリック教団ア ウグスチヌス派の修道院の院長として亡くなった のであり，決して迫伝学者として見做されていた わけではない。別に紹介するように，むしろ，気 象学者として認められていた。その後の遺伝学発 展の成立過程は追跡可能であるが，メンデルがど のような状況で研究をおこなっていたかについて はいまなお明確でない点が多い。本特集号ではこ れらの点に鑑みて，メンデルの状況をできるだけ 忠実に追跡することを目論み，誤解されていると 思われる点は正し，メンデル像をいささかでも正 しいものにできればと思って本特集号を編んだ。