血の通ったデータアプローチ: データの背後に人間·環境·社会をみる

摘要

社会調査，データアプローチ，ビッグデータ，といったお題をいただいた。なぜか，博論のときに高橋鹰志先生（副査）より「統計を多用する研究は総じて客観的で味気ないものだが，君のは血が通っていて好ましい」と最大級のお褒めの言葉をいただいたことや，たまたま社会調査の統計分析が並んだシンポジウムで質的研究原理主義の某大先生日く「無味乾燥な定量データ分析に頼る研究は失格だ」との発言を思い出した。筆者自身は定量も定性も節操なく使い，定量が無味乾燥とは思わないが，ビッグデータに血が通うだろうか，と思うことはある。数量化理論で有名な林知己夫先生は「血の滴る」という表現を残している。戦中に神風特攻の成功率の高い進入角度，戦後の混乱期に刑務所不足を背景に釈放しても再犯率の低い受刑者予測，といった問題に取り組んできた方の言葉には迫力がある。