慢性腎臓病患者における鉄調節障害

摘要

貧血は未だ慢性腎臓病（CKD)患者にとっては重要な合併症である。従来腎性貧血の主な原因は相対的なェ リスロポェチン（EPO)の産生障害と考えられてきた。一方で近年鉄の造血への利用障害がCKDにおける貧血 に重要な役割を果たすのみならず，CKD患者のイベントや生命予後に影響を与える可能性が指摘されている。 我々の約1,000名の維持透析患者を対象とした3年間にわたる前向き観察研究においてもフェリチンが高値 (>=100ng/m/), TSATが低値（<20%)を示す鉄利用障害を伴う患者は他の患者群と比較して有意に高い心血 管系合併症（HR: 4.45, p<0.001)や総死亡（HR: 5.8, p<0.001)のリスクを示した。これらの結果からCKD 患者における鉄利用障害はこれら患者の多くの合併症や生命予後と密接な関連を有しており，これら患者への 貧血管理は患者の病態を十分に確認した上で行う事が望ましい。