ボーリレミルの特徴を活かした新しい選択旳反応の開発

摘要

現代社会の豊かで便利な生活は，有機合成化学によつて得られる医薬品，高分子材料や有機電子材料などに代表される多様な有機化合物によって支えられている。現代の有機合成化学では，まず反応させたい化合物を，有機溶媒に溶解させて化学反応を行うことが一般的である。溶液中では，化合物が十分に拡散するため基質同士が接近しやすく，反応が適切にコントロールされると「信じられて」いる。しかし，反応総重量の8096から9096を占めると言われている溶媒は，そもそも反応の物質収支には含まれない無駄な存在であり，製造コストの上昇，環境負荷や廃棄物増大の大きな要因となってい る。また，反応体積の大部分を有機溶媒が占めるため，目的物質の生産量に対して反応装置が大きくなる傾向があり，特に大規模な化学合成プロセスにおいて，設備コストゃ管理コストが大幅に増大する。このような問題に加え，反応に溶媒を用いることが前提となっているために，これまでの有機合成化学が，溶媒に溶けない基質を扱いづらいという問題も大きい。特に，近年求められている高性能有機電子材料では，大きなパイ平面構造に由来した分子間相互作用により溶解性が低下する場合がよく見られ，溶媒を用いた合成が難しくなる傾向がある。溶媒を用いずに基質のみを直接反応させる方法がもしあれば，こうした材料の開発に理想的であると考えられるが，固体の低い混合効率や再現性の懸念から多くの場合避けられている。