甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生腫瘍は,文字通り下垂体腫瘍が自律的にTSHを過剰分泌し,甲状腺ホルモンが増加するため,典型例では甲状腺中毒症状(動悸,頻脈,発汗増加,体重減少)を認める.基本的に良性腫瘍であり,頻度は下垂体腫瘍全体の2.8%と稀とされてきたが,近年は診断例が増加している.画像上はマクロアデノーマで発見されることが多く,鞍上部進展または海綿静脈洞浸潤を伴っていることが多い.病態としてはTSH分泌がネガティブフィードバックを受けず,甲状腺ホルモンが高値であるにもかかわらず,TSH分泌が抑制されない不適切TSH分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of TSH : SITSH)を呈する.TSH分泌単独に加え,成長ホルモン(GH),プロラクチン,稀に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を同時に産生することがある.TSH産生腫瘍を疑う契機としては,甲状腺中毒症状,血中甲状腺ホルモン(遊離サイロキシン:FT_4)が高値にもかかわらず,Basedow病などの原発性甲状腺機能亢進症のように血中TSHは抑制されず,正常?軽度高値を示すSITSHを呈している場合である.
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