過去の研究を調べてみると,シールドガスとして用いるガス種やガスの混合率などの適正化の検討はこれまでにもあるが,溶接中にガス組成を変化させて溶接現象を制御しようとする試みは,着想も含めてほとんど無いことがわかった.わずかに見られた例は,溶接金属の低酸素化を目指した純Ar雰囲気中でのGMA溶接において,アーク放電の安定化を図るために微量のAr+CO_2の混合ガスを周期的に吹き込む試みや,超狭開先での溶接においてアーク発生位置を上下させる目的で,混合ガス(Ar+2%O_2)を用いたシールドガス中にCO_2ガスを吹き込み,ガス組成を2.5Hzの周期で変化させる試みなどであった.そこで,本研究は,1Hzから100Hzまでの幅広い範囲の周期でアーク雰囲気のガス組成を変化させた時に,アーク溶接現象がどの様に応答して変化するのかについて,基礎的に調べる処からスタートした.本報ではその内容と,そこから導き出された新しい溶滴移行制御の考え方,ならびにその工業的な適用可能性について検討した結果を報告する.本研究ではパルス状のガスを添加してアーク雰囲気のガス組成を動的に変化させる方法を,「パルスガスMAG溶接(Pulsed Gas MAG Welding)」と称して,従来法と区別することとした.
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