偽膜性腸炎

摘要

偽膜性腸炎の原因の多くはClostridioides difficile (C. Diff)感染症であり,抗菌薬を使 用し下痢や腹痛,発熱を来した場合に疑う。C. Diffは芽胞を形成するため環境中に長時間存在し,患者や医療従事者の手指を介して院 内感染を起こすことがあるため接触予防策が重要であり,消毒には次亜塩素酸ナトリウ厶 を用いる。C. Diffの治療は,抗菌薬を中止し,メトロニダゾール,バンコマイシンなどが選択され る。また，201?年よりべズロトクスマブ,2018年よりフィダキソマイシンが治療薬の ラインナップに加わった。偽膜性腸炎(pseudomembranous colitis ； PMC)は 大腸粘膜に偽膜を形成する腸炎である。その原因の多く はClostridioides difficile (C. Diff)による感染症であ り,抗菌薬,抗がん薬といった宿主の腸管内微生物に影 響を与える薬剤の使用が発症に関連する。患者は発熱や 腹痛,下痢といった症状を呈し,排泄物に含まれるC. Diffはヒト,環境を介し，他者に感染するため院内 感染の観点からも重要な細菌である。