言葉の玉手箱キーワード解説

摘要

教育基本法教育勅語を基本原理とする戦前の教育体制を克服し，人間の尊厳と個性尊重，権利としての教育，教育の機会均等，男女共学などを内容として1947年3月31日に制定された法律.それゆえに，保守勢力は日本国憲法と教育基本法を敵視してきた.第一次安倍政権は憲法，教育基本法「改正」に向けた政治日程を具体化し，2006年12月20日に国民の反対を押しきつて教育基本法「改正」を強行した.この「改正」で，学校の制度原理のひとつ「男女共学」が削除される一方，教育目標として「我が国と郷土を愛する」ことが書き込まれたり，教育への政治的介入の手段にされかねない教育振興基本計画が制度化されている.これらは教育の自主性·自律性を否定し，教育を政治と行政の手段として利用することを正統化しようとするものだったが,政治·行政による教育への「不当な支配」禁止を削除することはできなかった.教育運動の側には，現行教育基本法を悪法と捉え，排斥しょうとする主張が見られる.しかし，教育基本法が現行法であるかぎり，否定するだけは戦略的な敗北である.日本国憲法に適合的に解釈運用する戦略的取り組みが求められる.