飲水投与法導入と飼養環境改善による 養豚場の抗菌剤使用量低減とその後

摘要

抗菌剤は、動物およびヒトの両方で、細菌感 染症を制御するのに非常に重要なツールの一 つである。しかし、近年、医療における薬剤耐 性対策が世界的な課題となり、ワンへルスアブ ローチのもと、医療、獣医療、環境などさまざま な分野の横断的な対策が求められている。各 分野において薬剤耐性菌の選択圧となりうる 抗菌剤使用量が注目されているが、日本の動 物においては販売量を基にした使用量が報告 されており、豚での使用量が最も多くなつている。日本の食肉lkgあたりの販売高はEUの報 告に比べて高く、高使用量農場における適正 化や低減が必要である。豚では、個体診療が 主体の牛と異なり、群単位で抗菌剤の投与を実施するため、この投与方法が使用量を増加 させる一因として考えられている。投薬指示書 データを分析した養豚場の使用実態に近い複 数の調査において、群治療目的の投薬方法が 全体の9割を占めることが明らかになつている。 一方で、養豚農家および管理獣医師の抗菌剤 使用に対する意識調査結果をみると、抗菌剤 使用による利便性および必要性認識が危険性 認識を上回っており、日常的に病豚の治療に用 いる抗菌剤を単純に減らすことは容易ではな レ、。そのためには生産者と獣医師が取り組み やすい低減策が必要だが、国内における報告は少なく、無薬養豚という特殊な事例に限られている。