ステロイドは重要か?——タキサン系化学療法における前投薬と過敏症反応に関する遡及的検討

摘要

タキサン系抗がん薬（以下,タキサン）であるパクリ タキセル（PTX）とドセタキセル（DTX）は,過敏症 反応（HSR）を防ぐためにデキサメタゾンが前投薬とし て使用される。HSRは1980年代後半のPTXの開発時で は前投薬なしで25-30%,1990年代のDTXの開発では前投薬なしで42%に生じた。また前投薬により,それぞ れ2?3%,13%程度に発生率を改善することができ， 実臨床で使用できるようになった。米国の添付文書で は，PTXは投与12時間前と6時間前にデキサメタゾン 20 mgを経口投与すること，DTXは投与前日からデキ サメタゾン8 mgを1日2回，3日間経口投与することがそれぞれ推奨されている。しかしながら高用量のデキサ メタゾンは，皮膚炎,白内障,クッシング症候群，糖代 謝障害,胃潰瘍のような多くの副作用を引き起こす可能 性がある。そのため，現代では臨床試験も含めて低用量 のデキサメタゾンによる前投薬レジメンが使用されてい る。しかし,最適な前投薬レジメンに関するコンセンサ スは現在のところ明らかではない。