Current Organ Topics: Lower G. I./Colon and Rectum Cancer 大腸癌大腸癌における各種希少遺伝子異常の診断と治療Ⅱ. HER2陽性大腸癌の診断と治療

摘要

ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型（human epithelial growth factor receptor 2: HER2）はチロシンキナーゼ受 容体の一つであり,乳癌や胃癌をはじめ様々な癌種にお いて遺伝子増幅または過剰発現が認められている。変異 型遺伝子をマウス線維芽細胞（NIH3T3）に導入 すると細胞が悪性に形質転換し，結果ヌードマウスにお いて腫瘍の形成が認められるようになると報告されてい る。さらに neu 遺伝子（ヒト HER2遺伝子のげつ歯 類ホモログ）を過剰発現するトランスジェニックマウス は,乳癌を発症することが示されている.これらの結 果から,細胞の悪性化や腫瘍形成能促進におけるHER2 のドライバー遺伝子異常としての役割が示唆されてお り，HER2過剰発現による異常な機能に拮抗するための 治療方法が各癌種において開発されてきた。以下, HER2陽性切除不能進行再発大腸癌（mCRC）における 診断とその治療法に関して,近年のエビデンスをベース として解説する。