軽水炉機器の健全性を合理的に確保する維持管理技術

摘要

軽水炉発電はわが国の基幹電源の1つであり，今後も長期にわたり重要な役割が期待されている。 しかしながら，初期に建設された原子力プラントは建設後約30年を経ておi），長期債周の機器·材料に対して，経年変化を十分考慮しつつ，安全性と経済性とを両立させ運転していくことが重要である。 そのためには，機器の健全性を合理的に確保するための技術を開発·高度化し，これらを有効な維持管理技術として確立する必要がある。 一方，昨今の国内原子力発電所で見られた応力腐食割れ(SCC)の問題を契機として，国は原子力発電所の維持管理の透明性，規範性を一層向上させるため，民間の原子力維持規格をベースとした「維持基準」の導入を決定し，新たな検査制度の一環として，同基準が昨年10月から施行されている。 こうしたま売れを受け，維持基準のさらなる高度化，体系化に対する社会的ニーズは一層高まりつつある。こうした動向のもと，電力中央研究所（電中研）においてはこれまでに培われている研究ポテンシャルを最大限に生かし，「軽水炉機器の維持管理技術の高度化に関する研究」を2003年度からの3カ年重点課題の1つとして実施している。 本課題では，圧力容器，配管等における損傷のメカニズム解明や破壊力学による欠陥評価に関する研究，リスク評価の適用を通じて得られる運転保守の合理化に関する研究等を推進し，これらの成果を国内外の学協会（米国機械学会ASME，日本機械学会，日本電気協会他）維持規格等に反映させることによってその実用化を図ることを目的としている。以下では，本課題のうち，機器の健全性評価にかかわる材料関連研究についてその概要を示す。