フィリピンにおけるデング熱媒介蚊の生態疫学研究

摘要

近年，熱帯·亜熱帯地域においてデング熱·ジカ熱·チクングニア熱等の紋が媒介するアルボウイルス感染症が流行している。水環境と蚊媒介感染症は密接に関係している。近年，とくに気候変動にともなう洪水頻発化や途上国で進む人口密度の増加は蚊媒介感染症流行の要因と考えられる。蚊媒介感染症の制御には.ヒトを対象とした創薬·診断·治療等の医学的対応だけではなく，蚊の生態に着目した制御も同時に考える必要がある。例えば，蚊の産卵場やボウフラ(幼虫)(図1)の生息場となる水場(図2)の制御には，水生昆虫としての蚊の生態特性を理解する必要がある。蚊の幼虫·蛹·成虫ごとの生息場適性，蚊の飛翔生態，ヒトから蚊へのウイルス伝播動態，ボルバキア等の蚊共生細菌などの幅広い観点から蚊の生態を把握するためには，環境工学，生態学，疫学モデル，分子生物学などの多角的な研究アプローチが求められる。