タイ王国におけるラグーンシステムの現状と高度化技術の展望

摘要

ラグーン法は運転に必要なエネルギーが太陽光のみであることや維持管理がほとんど必要ないこと，熱帯・亜熱帯地域の気温が処理条件に適合し，きわめて高い浄化能力を示すことなどから，タイをはじめとする開発途上国において広く用いられている。タイで稼働中のラグーンシステムにおける現場調査の結果，窒素・リンの除去率はそれぞれ，77.9％，62.1％ときわめて良好な処理能力を示し，開発途上国における栄養塩除去に有効な排水処理法であることが示唆された。 藍藻類種は各ラグーンにおいて変遷し，処理水にはMicrocystis aeruginosa が異常増殖したことから，藻類の増殖抑制と除去を図るシステム導入が必要であることが示唆された。また，生態工学的手法による高度化研究として，魚類を導入したラグーンシステムにおける存在効果について試験したところ，バイオマスの減量率が対照系と比較して43％となり，ラグーン法の高度効率化やコンパクト化の可能性が示唆された。