ルーメン細菌叢から探る反芻家畜の生産性向上の可能性

摘要

ゥシが摂取した飼料は第一胃（ルーメン）に生 息する微生物による分解'発酵を受け、短鎖脂 肪酸ゃ微生物体タンパク質などの栄養源に変換 される。乳牛ではルーメンで産生される短鎖脂肪酸は3kg/日にのぼり、維持エネルギーの70 をまかなつている。したがつて、ルーメン微生物は ゥシの栄養獲得の根幹を担う存在である。ルー メンには細菌、プロトゾァおよび真菌といった微 生物が高密度で生息しており、なかでもバイオ マス量と機能的多様性の点で細菌がルーメン 発酵においては最も重要な役割を果たす。ルー メン細菌の研究は1940年代の無酸素環境で の培養技術（嫌気培養法）の確立（Hungate, 1950)に始まり、これまでにさまざまな機能をもつ 細菌株が分離培養され、56属102種が公的な 菌株分譲機関に登録されている（Chreeveyら， 2014)。一方、1990年代にDNA情報に基づく非 培養アプローチが導入されるとルーメン細菌叢 の解析は飛躍的に進み、ルーメンには少なくとも 5,000種の細菌が生息するこおが明らかになった (Kimら，2011)。本稿では多種多様なルーメン 細菌の中で飼料分解の中核を担う細菌群とそ れらと宿主生産性との関連について述べる。