マネジメント力の強化が課題－カイゼンより管理面の強化を

摘要

戦後の日本は、米国に比べて科学技術や工業化の遅れを自覚したことから、自動車、家電に代表される製造業は貪欲に米国に学んだ。そして米国にキャッチアップすることを目標に、企業は経営者·就業員が一丸となって復興に邁進したのである。多くのマネジメント技術も貪欲に学んだが、単なる模倣ではなく、日本の環境に合わせ日本的経営スタイルに換えて導入した。それが、終身雇用、年功序列の経営慣行、従業員の「奉仕の精神」に支えられた日本的経営である。その代表が小集団活動ではあったが、その成功は逆に、希薄なマネジメントでも運営できる現場をつくり、マネジメントを弱体化させた。管理·監督者は作業員への指導監督が本務であるにもかかわらず、率先して現場作業や段取りに従事し、現場の庶務を一手に引き受けていたのである。これは、米国のスーパーバイザーやフォアマンの役割とは、いささかかけ離れたものであった。また、設計技術、生産技術、品質管理、生産管理スタッフの力をも弱体化させた。「誤った設計をしても現場で良品にしてくれる。機械スピードは現場で決める。品質基準は現場で決める。生産計画を現場で立てる」などが多くの製造現場で行われていた。これらはスタッフ自らが専門性を発揮して実施しなければならない業務である。ここまでできることが現場力ではなく、現場は与えられた標準·計画を順守することが本来の役割である。しかし、プラザ合意：円高→海外シフト→非正規雇用増加→小集団活動衰退と経営環境が変わる中で、現場の技能や自主性で支えていた業務が抜け落ちていく分、管理·監督力の強化とスタッフの技術力でカバーしなければならない。