紹介：エッセイレビュー

摘要

私たちは日々，当然のようにネジをしめ，プリンターのトナーカートリッジを交換し，A4やB5といったコピー用紙を補充し，電池や電球が切れれば交換をする.それらには，何の調整を加えることなく，装填し，利用することができる.しかしながら，この「交換が可能であること」は，どこから生じてきたのだろうか.それは，「互換性」や「標準（スタンダード）」の歴史を繙くことで明らかになる.今回のエッセイレビューでは，そうした「互換性」や「標準」といった科学技術史に属しながらも，政治的·経済的·社会的な側面を持つ問題を扱った研究書である橋本毅彦氏の『「ものづくり」の科学史』（初版は2002年に『〈標準〉の哲学スタンダード·テクノロジーの300年』として講談社から出版され，2013年に改稿と第7章の追加を経て，講談社学術文庫に入った)1〉を取り上げ，基本的な論点を整理した上で，他分野との関連を意識しながら，当該研究の重要性を再確認する.