医食同源と健康食品ー排尿障害適用での科学的実証

摘要

総務省の推計（2020年9月）によると高齢化率は28.7%となり,国民の3人に1人が65歳以上の高齢者が占める我 が国において,医療費を含む社会保障費が高騰しており，セ ルフメディケーションの普及に伴い,健康増進や疾病の予防?治療を目的として健康食品?サプリメントなどを用い た補完代替医療,統合医療への関心が高まっている.加齢に伴って,急な尿意や尿意切迫感,頻尿,残尿感な どの下部尿路症状を訴える高齢者が増加し,生活の質（QOL）を低下することが問題となっている.排尿障害を 改善する機能性食品として植物製剤や健康食品が用いられている.ヤシ科シュロ属のノコギリヤシ（Saw palmetto）の果 実エキス（SPE）は,飽和?不飽和脂肪酸が90%以上を占め，その他,高級アルコール及びステロール等で構成されている.SPEの薬理作用としては，5α-リダクターゼ阻害や抗アンドロゲン作用などにより前立腺の肥大を抑制し排尿障害 を改善することから,主に男性を対象とした処方薬や健康 食品として用いられる（Gutierrez et al.,1996, Van Coppenolle et al.,2000,山田静雄ら,2021）.その他の薬理作用として,抗炎症作用，細胞増殖抑制作用,鎮痙作用などの薬理作用に加え，膀胱に対する新たな薬理作用も報告され,女性での有用性も示唆されている（Oki et al，2005,鈴木真由美ら,2005, Suzuki et al. 2007, Nasrin et al, 2014, Yamada et al., 2020, 2021, 2022a b）.本稿では,医食同源と関連して健康食品について 概説し,下部尿路症状に対するSPEなどの機能性食品の有 用性について主に私どもの研究結果を紹介する.