マインドストーム　子供，コンピューター，そして強力なアイデア

摘要

本稿ではSeymour Papert（1928 ?2016 年）による『マインドストーム　子供，コンピューター，そして強力なアイデア』（以下，本書）を取り上げる．Papertは本誌読者の間では数学者および人工知能を専門とする計算機科学者として知られていると思われるが，発達心理学の大家であるJean Piaget の下で学習に関する研究に携わり，プログラミング言語LOGO の開発ほか教育分野で多くの業績を残している．本書は1980 年に出版された彼の教育分野での最もよく知られた文献であり，情報教育にかかわる世界中の教育者や研究者たちがこの分野の古典として挙げる1 冊である．私は本書にコンピュータと教育の問題を考える上でいまだ多くの有益な示唆があると考える．そこで本稿では3 つの問いを手掛かりに本書を紹介する．