コロナ禍もすでに3年目を迎えた。世界が混迷するなかでも肺癌研究は着実に,かつ以前にも増してスピード感をもって前に進んでいる。2022年度の最新のトピックスは,外科治療,ゲノム診療そして病理診断の3領域をピックアップさせていただいた。この1年の間にいずれの領域においても大きな話題が出されている。外科治療におけるトピックスは日本発の縮小手術に関する新たなエビデンスの創出である。肺癌に対する標準手術は1995年にGinsbergらによって報告されたLung Cancer Study Groupによる多施設共同研究の結果を踏まえ,肺葉切除を標準としてきた。しかしながら,肺癌の診断精度が大きく向上している昨今の状況にこの結果を当てはめてよいかという疑問が提示されてきた。本邦では日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)を中心に画像所見と病理所見から非浸潤肺癌を定義し,さらに縮小手術の可否を問う臨床試験が計画されてきた。このうち,腫瘍最大径に対する充実成分の割合(C/T比)が0.5を上回り,2cm以下の小型肺癌に対する肺葉切除と区域切除の成績を比較するJCOG0802/WJOG4607L試験結果がLancetに報告された.一見paradoxicalにみえるこの試験結果は,様々な議論を呼んでいる。本稿ではfirst authorとして試験結果を報告された聖マリアンナ医科大学呼吸器外科の佐治 久先生に,これまでのこの領域の研究の経緯と本試験の概説をお願いした。
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