本論文は,西南日本内帯の中部地方に位置する土岐花崗岩体を例にして,岩石学的手法を用いて岩相分布および化学組成分布を明らかにし,これを通して地殻深部における花崗岩質マグマ溜りの貫入定置プロセスについて検討を行うものである。花崗岩体の貫入定置様式の知見を得ることは,地殻の進化を考える上で非常に重要な課題である。なぜならマグマ溜りはその冷却に伴い花崗岩体となり,花崗岩質マグマの貫入の際周囲に放出される熱は周囲の岩石に接触変成作用,ミグマタイト化作用ひいては広域低圧高温型変成作用をもたらすためである(例えば,DeYoreo el al.,1991)。このようにして形成された花崗岩,変成岩は大陸地殻の大部分を占める。また,岩石学的特徴の解明は,応用地質学的観点における花崗岩体中の割れ目の分布や特性を理解する上でも重要な視点の1つである(Mazurek,2000;千木良,2002;Mazurek etal.,2003;Jakobetal.,2003;Bahatetal., 2003;Bankwitz et al., 2004;Bankwitz and Bankwitz,2004)。構成鉱物の種類,量比,形状等の相違に起因する岩相の相違は,岩盤物性にコントラストをもたらし,岩休園結後の地質イベントに起因する応力の集中や解放に影響を与える。
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