超分子ナノ構造体の設計と細菌識別技術

摘要

ナノ粒子とは1~数百nm程度の大きさを有する粒子を指し，近年ナノテクノロジーの一種としてさまざまな分野への応用が期待されている.特にナノ粒子と分子センサーを組み合わせた超分子ナノ構造体は，サイズや形状を最適化し複数の認識部位を導入することで，優れた超分子応答を示すため注目されている.認識ターゲットに合わせて設計した超分子ナノ構造体は，選択性が高く多点認識や多機能化が可能なため，細胞表面のような複雑な構造を認識対象とした研究が盛んに行われている、例えば2020年Zhaoらは，ポリスチレン系の線維にE.coli選択的なァプタマーとβ-ラクタマーゼ応答性の萤光団を修飾した超分子ナノ構造体を開発した.この センサーでは，アブタマ一が大腸菌を認識·結合するとβ-ラクタマーゼの作用により萤光が生じ，さらに活性酸素を放出して殺菌作用を発現する.またYeらは，光刺激で発熱するポリドーパミンナノスフィアに着目し，蛍光標識されたaureus選択性のアプタマーと組み合わせることで，S.aureus特異的な識別と光照射による熱殺菌を実現している.このように超分子ナノ構造体は，ナノ粒子と分子センサ一の設計や組み合わせをエ夫することで多様な識別機能を発現できる.