特集「わが国の診療ガイドラインの現在地,問題点,今後の方向性」を企画した意図

摘要

本号の特集は,がんの診療ガイドラインにおける現状と課題,今後の展望を各方面から切り込んでいただきたいと考え,自ら選りすぐりの4名を指名して執筆いただ いた。根拠に基づ く 医療(evidenced-based medicine: EBM) が浸透し，進歩しつづける医療技術を適正に利用するこ との必要性からガイドラインが生まれ，今や，がん関連 だけでも枚挙にいとまがない数の診療?治療ガイドライ ンが作成されるようになってきた。近年,ガイドライン を取り巻く状況は大きく変化している。すなわち，現場 の医療者がガイドラインを金科玉条のごとくに奉る，つ まり盲信する風潮が顕著となってきている。ガイドライ ンの推奨から外れる医療行為が「やってはいけない医 療」と位置付けられ，批判にさらされたり，一方でガイ ドライン推奨どおりの医療行為ができない患者に，医療 行為を放棄するような事態を引き起こしたり，さらには ただ無思慮に「ガイドラインをなぞるだけの治療」が横 行したりしていると感じているのは自分だけだろうか。