河川近自然化工法実施サイトにおける水生昆虫と付着珪藻の季節変化

摘要

神流川は，群馬県西部を東流する利根川上流域の主要な支流であるが，群馬県はこの上流部に複数の積石による水利工と置石工を施し，瀬と淵を取り戻す河川近自然化工法の実験工事を実施している。 本報告では，この実験工事において月ごとに珪藻と水生昆虫の種および生物量を年間を通じて調査し，珪藻と水生昆虫の食物連鎖を介した相互作用を検討した。 その結果，自然石を配置した実験工事終了後の非常に短い期間に，水生昆虫類の数は急激に回復し，新たに形成された淵で魚類の生息数が約3倍に増加したが，これは付着珪藻類生産の場である瀬と，魚類が生息しやすい淵が有機的に連続した場の形成が貢献していると考えられた。 珪藻バイオマス量が多い地点では水生昆虫も大きな群集であり，工事後回復の早い珪藻に植物食の水生昆虫が餌を求めて集まり，つぎに動物食の水生昆虫がやってきて多様性が回復していくと推定された。