機能性ナノ粒子を用いた生体情報の可視化および病態の定量評価

摘要

ナノ粒子を医療技術に応用する研究は広く行われており，すでに造影剤りやドラッグデリバリ一等のいくつかの分野において実際に医療現場に導入され始めている.一言に医療応用と言っても造影剤の様に生体内，つまり血液や組織液中に注入する場合と，血液検查や病理検査の様に生体外に取り出した検体等に対して使用する場合の違いがあり，当然ながら両者に求められる機能は大きく異なる.生体内への応用であれば他の薬剤と同じくまず生体への毒性を正確に把握し，その粒子の機能によって得られる便益が十分にリスクを上回っているかが重視される.また，血液や組織液中は大小さまざまなイオンや生体高分子が高濃度に溶け込んで複雑に相互作用しており，その中でナノ粒子が凝集せずに安定に分散し続ける工夫が必要となる.一方で，生体外で用いる場合には毒性の問題や生体内特 有の複雑環境からは解放される代わりに，ナノ粒子の持つ物性を最大限に活かし独自の機能を発揮することが求められる.本稿では，生体内への応用例として機能性金ナノ粒子を用いたCT造影剤および放射線治療増感剤の研究について，病理検査への応用例として独自の超高輝度萤光ナノ粒子を用いた研究について，それぞれに求められる機能や解決課題も併せて紹介する.