新技術とパブリックアクセプタンス: バイオテクノロジーを例として

摘要

現代社会には種々のリスクが存在する。 リスクは，危険に遭遇する可能性を意味し，リスクの大きさは「事象の生起する頻度」と「望ましくない結果の大きさの程度」の積として表わされる。 科学的に説明される客観的リスクは，人々および社会に受け入れられる段階でバイアスがかかり，そこでは主観的なリスクとなる。 これらのバイアスには，正常性バイアス，カタストロフィーバイアスなどがある。 また，リスク認知は，当該リスクをどの程度理解しているかの未知性にも影響される。 例として，遺伝子組換え作物（GMO）に対する専門家と一般の認知の差（見解の差）を示す。 この技術自体に対する未知性の差の他に，多くは相互理解の不足からくる誤解であることが明らかになっている。 21世紀は「安全と安心の社会」にする必要があり，この両者の架け橋の1つとしてリスクコミュニケーションがある。 また，リスクコミュニケーションの効用として，新技術が世の中に受け入れられやすくなること（パブリックアクセプタンス）も期待される。