農業水利施設（パイプライン）の管路更生工法について

摘要

全国に展開している農業用の用排水路は約40万km 以上にも及び，その内基幹的水路は約5万kmにも及ぶ。その多くは戦後から高度経済成長期にかけて整備されており，耐用年数を超過して老朽化している水路が全体に占める割合は年々増加傾向にある。経年劣化や局部的な劣化に伴った突発事故も増加傾向にあるため，監視やリスク評価などから計画的な保全の推進が必要とされてきており，施設の長寿命化およびライフサイクルコストの低減が望まれている。用排水路は，埋設箇所が山間部にも及ぶことや傾斜部·屈曲部を多く含むこと，管内へのアクセス箇所が限られることや圧力管であることなどの特徴から,その保全についても容易ではない。これらの特徴に対して施工時に柔軟であり，硬化に伴ってプラスチック管またはガラス繊維強化プラスチック管となる更生工法には大きな優位性が見られる。しかし下水道分野を主として発展してきた管路更生工法をそのまま適用することは難しく，課題に対する検証や適用範囲の検討，材料に対する要求性能など整理すベき点は多い。本記述では円形の農業水利施設（パイプライン）に対して管路更生工法を適用する際に生じる課題やその適応性，要求性能などについて述べることとする。