Metabolomic responses of an estuarine benthic amphipod to heavy metals at urban-runoff concentrations

摘要

このたびは日本水環境学会の論文賞を授与いただき，心より関係各位に感謝申しあげます。主要対象論文は，ニホンドロソコェビ(Grandidierella japonica)のメタボローム解析を通して，都市流出水や底質の生態毒性のためのバイオマーカーを選出しょうとする一連の研究成果を報告した論文のーつです。都市流出水中に高濃度で含有されるCu,Zn,Cdの3種の重金属をニホンドロソコェビに曝露してメタボロームを抽出し，Orbitrap型質量分析計によるノンターゲット分析と部分最小二乗判別分析によって，各重金属に特異的なバイォマーカーを見出しました。複雑な混合物である環境試料の生態毒性要因解析にメタボローム解析を用いることの有用性の一例を示せたと考えております。開連論文として，ニホンドロソコェビによる毒性評価に際して底質の粒径がその生長に与える影響を検討した論文と，主要対象論文の前提とも言える参照底質によるメタボローム変化の有無を解折した論文を上げていただきました。これらの論文では，東京湾に面した河口や感潮河川の底質の6試料において，底質粒径は死亡率には影響を与えなかったが生長には影響を与えたことを示し，4種類の構成成分の異なる標準底質とCu添加系で比較するとメタボローム変化はCuによる影響がより顕著でありメタポロミクスにおいて底質そのものの影響は制約とならないことを明らかにしました。