橈骨神経神経腫の外科的治療後の 長期成績;患者報告アウトカ厶（PRO） と再手術率

摘要

【背景】橈骨神経知覚枝における神経腫は疼 痛や痺れなどの症状が出やすく,かつ治療の 満足度が得られにくいといわれている。しか し,橈骨神経神経腫の外科的治療に対する患 者報告アウトカム（以下,PRO）の過去の 報告は少ない。本研究の目的は,①橈骨神経 腫手術後の上肢機能,疼痛,患者満足度を調 査し,②上肢機能の悪化,疼痛の増强などに 関連する要因を評価し,③再手術率と再手術 に至る要因を明らかにすることである。【方法】2002～2016年に橈骨神経腫の外科 的治療を受けた患者の後向き研究を行った （n = 54）。 54人中25人が,平均術後10.7年 間にわたるPRO調査システム（PROMTS） を完了した。調査では,上肢機能スコア,疼 痛による生活支障スコア,うつ症状スコア （いずれも一般集団の平均スコア=50, 1SD = 10），数値化した疼痛の値（0～10）,手術 による変化度（-3～+ 3）を評価した。【結果】PROMTSスコアは,上肢機能450 ±12.1（疼痛による生活支障55.5± 10.3,う つ症状49.9±10?2で,一般集団の1SDの範 囲内であった。しかし8人の患者（32%） は神経腫手術後に症状が変わらないか,また は悪化していると報告した。疼痛の値の中央 値は3 （四分位範囲,1～6）,手術による変 化度は+ 2 （四分位範囲,0～3）であった。 PROMIS上肢機能スコアが悪い傾向があっ たのは,高齢の患者（力= 0.002）, PROMIS 疼痛による生活支障スコアが高い患者（p< 0.001）,疼痛が强い患者（p= 0.012）,手術に よる変化度が小さい患者（p=0.01）であっ た。再手術率は20 %であり,複数の神経種 が見られることが多かった。【結論】橈骨神経腫は治療が困難で,再手術 率は20 %と高く,外科的介入後の改善は68 %に留まった。手術を受けた患者のPROMIS スコアは,一般集団の平均値と近かったが, ばらつきは大きかった。