地球温暖化ガス削減に呼応した排水処理技術の確立

摘要

ここでいうところのメタン発酵装置とは，いわゆる「UASB（Upflow Anaerobic Sludge Blancket）」であり，下水の汚泥や家畜の糞を用いたメタン発酵装置とは異なり10～30倍の反応速度を持つ。グラニユールと称されるメタン菌の塊で1mm前後の粒子と排水を接触させることにより，排水中の有機物を分解しながらメタンガスと炭酸ガスに変換させる。メタンガスは都市ガスと同じ主成分であり，そのままボイラーの熱源として利用し，得られたスチームを工場で利用することができる。あるいは，エンジン燃料としてエンジンを回す。発電機への利用では経済産業省のFIT制度（固定価格買い取り制度，2021年度までに実施で20年間39円／kwh固定で売電ができる）の利用で多くの実績がある。UASB方式によるメタン発酵方式は著しく少ない電力で運転できるうえ，汚泥の発生量は従来の1/10程度に減少し，さらに得られた電力を利用する等々の特徴で温暖化ガスの排出量削減に十二分な寄与ができるシステムである。本報文は，以上に述べた通り排水を浄化しながら副次的に発生するメタンガスを有効に利用しながら排水処理設備の運転コストを大幅に減らすと共に地球温暖化ガスを大幅に削減できるいわゆるUASB法についていくつか事例を紹介する。