日本の原子力発電と地球科学——9年間の「原発セッション」における議論を踏まえて

摘要

2011年東北地方太平洋沖地震により，東京電力福島第一原子力発電所において炉心溶融事故(以下，福島原発事故)が発生し，甚大な放射能汚染被害につながった。地震多発国である日本における原子力発電所の耐震安全性評価などの安全性に，地球科学が密接な関連をもっており，少なくない地震·地質研究者が，原発推進や脱原発など異なる立場から，この問題にかかわってきた。しかし，大多数の研究者は，政治経済的な問題をはらむ原子力発電に対して，「さわらぬ神に祟りなし」とも言うべき無関心な態度をとり続けてきた。地震学を専門とする本稿の筆者らもその例外ではないが，福島第一原子力発電所の大事故を目の当たりにし，われわれ地球科学者が地球科学と原子力発電所の深い関係から目をそむけるわけにはいかないことを痛感した。