物質構造の柔軟な担い手「水素結合」

摘要

水素結合は紙の強度の基本となるもので、水に濡れると結合が弱くなって紙の耐水性を悪くさせるが、その半面、水に離解しやすくリサイクルできるのは水素結合のお陰でもある。 一般に有機化合物は物質の基本である原子が、結合する相手の原子と、電子を共有する共有結合で結ばれているものが多く、この結合は安定なので分解するには大きなエネルギーを必要とする。 しかし今後の地球環境保全のためには循環型社会への移行が必須で、その意味からも物質の生産、使用、分解、再資源化という物質循環の輪が、少ないエネルギーで成り立つことが望ましい。 自然界の植物、動物がつくり出す産物がまさにこの通りで、その中で重要な役割を占めているのが水素結合である。 紙パルプ産業が使用しているパルプ繊維の特質も、セルロース分子の水素結合が生み出したものであり、これからの物質設計に水素結合を利用する研究が盛んになりつつある。 今回は、その現状について触れてみたい。