腹膜透析液評価のための細胞シート工学を用いた新規in vitro腹膜モデルの開発-お腹の中の皮膚(腹膜)を外で再現して，医療に役立てよう-

摘要

慢性腎不全患者(CKD)は，糖尿病，腎炎，腎硬化症などさまざまな疾患により腎機能が低下する疾患で尿毒素が体外へ排出できなくなり，5つのstageに分けられて診断されている.CKDのstage 2では糸球体瀘過量（尿量）が低下しているが自覚症状はほとんどない.症状が出始める本邦のCKDのstage 3以降は約2000万人と推定されており，6人に1人はCKD stage 3以降であり，医療経済の面からも社会的に問題となっている.腎機能低下がさらに進行した末期CKDは，1968年に215名から年々増加し，2019年末344,640人に達している.現在の末期CKDの治療法は，腎移植，血液透析等，腹膜透析(PD)等の3つのいずれかが挙げられる.腎移植は2017年に1742件（約0.3)と世界的なドナー不足である.一方，血液透析等は，体内の血液を一度体外に導き出して血液浄化器で血液を浄化して体内へ戻す治療法であり，末期CKDの97.1(内在宅治療0.2)を占めるが，週3回，1回約4時間の治療を通院で行うため，治療時間に束縛され社会復帰が難しい.