エンジニアのための破損解析

摘要

「直径1～2mm程度の銅の針金を素手で壊してみなさい」という課題に対し、小学校の高学年生以上であるならば、ほとんどの生徒がまず針金の中央部付近を両手で持って、繰返し曲げを与え、早ければ20秒間程度で、遅くとも1分間そこそこで針金を壊すことができる。これが典型的な「疲労破壊の例」である。彼らは、まず「疲労」の知識を学んではいないと考えられるのに、どうして疲労の原理を針金の破壊に適用できるのであろうか、不思議な気がする。このように、疲労の知識がなくとも、暗黙のうちに疲労の原理を適用すれば、部材を比較的簡単に壊せることは広く知られているといって過言ではない。 逆にいえば、部材は疲労によって簡単に壊れる、すなわち、ほとんどの場合、疲労によって壊れていることが容易に理解できよう。そこで今月は疲労破損を前提に、身近な破損事例の解析方法について述べる。