喜びの演劇的音声の合成品質に影響する音響的特徴

摘要

本研究では喜びの演技音声における音響的特徴に注目し，喜びに聞こえる程度に影響を与える特徴を分析し，それらの特徴がどの程度喜びの音声の合成品質に寄与しているか調査している．喜びの音声の合成品質に寄与している特徴としては，まず音響的特徴として高さ，明るさが挙げられた．演劇的特徴としては抑揚が挙げられた．そこで主観評価による順位付けを行った結果，最も喜びに聞こえる程度が高い変換音声は高さと明るさを変化させた変換音声，次に高さと明るさを変化させ喜びの抑揚を付与した音声，抑揚のみを付与した変換音声となった．抑揚は演技において特に重要な要素であるにもかかわらず影響がないという結果であった．単純に振幅を変化させる抑揚の付与では演技における喜びとしては不十分であると考え，新たに喜びの感情音声に見られる緩急の付与による抑揚らしさを検討し主観評価を行った．主観評価の結果，高さと明るさと抑揚を付与した音声が最も喜びに聞こえる程度が増し，緩急の付与では喜びに聞こえる程度は低くなった．