骨修復を目的とした生体活性材料の開発-アパタイ卜核析出と硫酸処理による細孔形成の影響-

摘要

超高齢社会の到来に伴い，骨粗鬆症等の骨疾患の件数が増加している.また，骨の形成不全等に代表される先天的骨疾患も依然として課題が残されており，骨修復を目的とした整形外科医療，さらには歯科医療の需要が今後ますます増加していくと予想される.骨疾患等により失われた骨欠損を修復する場合，欠損部を補填するための移植手術が行われる.この手術は移植する骨の種類によつて以下の三種類に大別される.患者自身の骨を移植する「自家移植」，他者の骨を利用する「他家移植」，そして人工骨で骨欠損を修復する「人工骨移植」である.自家移植は免疫不全や拒絶反応等の術後の合併症のリスクが低いのみならず，移植した骨が周囲の骨組織と同化するため，現在でも依然として最も効果的な骨欠損の治療法として位置づけられる.ただし，自家移植では患者自身の健全な部位（主に腸骨）から骨を切除するため患者への侵襲性が高く，さらに骨欠損が甚大なケースでは適用できなレ、.他家移植は主に欧米を中心に行われているが，術後の拒絶反応に対する懸念や倫理上，宗教上の問題が存在する.臨床における上述の事情から，患者への侵襲性が低く，拒絶反応等のリスクも比較的少ない人工骨移植の需要が今後ますます高まっていくと予想される.