シンポジウム「大都市圏の完新統に記録された人と自然の相互作用」開催にあたって

摘要

2003年8月31日に日本第四紀学会シンポジウム「大都市圏の完新統に記録された人と自然の相互作用」が大阪市立自然史博物館で開催された．本特集号はこのシンポジウムをもとに企画され，大都市圏の完新統について，現時点での研究到達段階を紹介するものである．日本の大都市圏は，後氷期に形成された海岸平野に立地している．人間活動の場である海岸平野は最終氷期最寒冷期以降の自然環境変遷に伴って形成された沖積層から構成されている．特に地表付近の沖積層は社会形成や人の生活に制約を加え，また一方で人間活動による改変を受けてきた、ここには人の生活と自然環境との相互作用が記録されており，それらを読み解くことにより，人間活動が自然環境に与えたインパクトを評価できる．都市地盤としての完新統は平野地下に埋没して分布し，直接観察することが困難である．近年，建造物地盤調査ボーリングに関するデータベースの整備が都市圏で進み，それを利用した3次元的な沖積層研究が大きく進展した．一方，考古遺跡発掘では，詳細な堆積相解析による地史変遷解明，あるいは近代の人間活動記録を地質試料より読み解く研究が活発に行われている．本シンポジウムでは, 研究内容および研究手法について，おもに以下の3点について討論を行った．