湯河原惣湯Books and Retreat

摘要

本計画ほ老朽化した観光会館を減築して，観光案内所と広場を計画し，湯河原の湯治文化の中心地温泉場の玄関口を再生するものである.公園入口の正面にある岩山の上には，堀口捨已による万葉亭(1955年)がある.この茶室は湯河原温泉ゆかりの万葉集から「はだすすき尾花逆葺き黒木もち造れる室は万代までに」の趣を再現しようと，草葺き屋根にくるみの皮付きの柱とハう表现で建てたとされる.簡素でありながら，素材の存在感がありのままに表現ざれた名建築である.この万葉亭と連なる玄関テラスやブリッジは，やはり限定した素材による簡素な建築が望ましいと考えた.万葉集の歌のように黒木(皮のついたままの木)とはいかないが，金属と木材によるシンプルな構成とし，木材は最小限必要な箇所だけ仕上げ，構造体は可能な限り現しにした.新たに加えた鉄骨の大屋根は，機能的には雨除けと設備スぺースの確保を目的とし，景観的には建物の印象を柔らかくする表現とするために，既存の屋根形状にならい曲面とした.曲面平面の軒下空間は深く計画し千歳川を眺める屋外テラス設え，内部空間からは万葉公園の美しい風景が軒に仕切られて望めるようにした.