湖沼への汚濁負荷対策としての人工湿地の利用:欧米での事例

摘要

湿地における水質浄化機能を工学的に強化した湿地浄化法は，省エネルギー，省コスト，省メンテナンスであるだけでなく，生物多様性の維持に貢献するビオトープ的な役割や，都市における自然的景観の付加が期待できる手法であり，そのユニークな多目的性により欧米において急速に普及してきている。 欧米では，工業排水や生活排水などのポイント汚染対策だけでなく，農地や市街地からの流出水対策にも人工湿地が利用されてきており，ノンポイント汚染を背景として湖沼法が改正され，流出水対策の強化が求められているわが国にとって参考となる事例に溢れている。 そこで本稿では，デンマークの農村地域における小規模ポイント汚染対策としての人工湿地の活用，そして都市表面流出水および合流式下水道越流水といった都市におけるノンポイント汚染対策としての英国，米国およびドイツにおける人工湿地の活用を例として，欧米における湖沼への汚濁負荷対策としての人工湿地の先進的な利用状況について紹介する。