肺がん

摘要

犬の原発性肺腫瘍は比較的まれで，すべての腫瘍症例の1%以下と報告されている。肺腫瘍は肺のあらゆる 組織から発生するが,気道や肺胞実質の上皮由来が主で，組織型の多くが腺癌であり，その他比較的まれである が線扁平上皮癌や扁平上皮癌，および間葉系腫瘍も発生する。また,一部の犬種（ミニチュア,シュナウザ一， バーニーズ,マウンテン-ドッグ，日本ではとくにウェルシュ,コーギー.ペンブローク）では，組織球性肉腫 が多く発生する。治療に関して，腫瘍が孤立性で転移所見がなければ,治癒目的で外科療法が治療の第一選 択として推奨されることが多い。腺癌を主とした，いわゆる「肺がん」に対する薬物療法においては，切除不 能または転移症例の場合に適用されることが多いが,完全切除後の補助療法としての適用も報告されている。 しかし，薬物療法のおける治療効果は，小規模な後ろ向き研究で有効性を示唆されるものがほとんどある。教科 書的にも肺がんに対する薬物療法の効果はほとんどわかっていないと記載されているがあきらかな腫瘤の 縮小効果や比較的長期生存する症例を経験することも事実である。肺腫瘍における薬剤選択は，転移症例も含め各腫瘍種によって検討するが,本稿では原発性肺腫瘍の多くを 占める上皮系腫瘍(肺がん）に対する適用例を紹介する。